みんないる

珍しく冬の北京の夢を見た。


積もった雪が、カチカチに凍っていて、吹き渡る風を吸うと肺が痛い。

大陸の人々は、『雪が降るときは寒くない、雪が解けるとき寒い』
という。
(下雪的时候不冷,化雪的时候冷)


上の学年も含めた同じ画室の同学(クラスメート)たちと、水辺で
船を見ていた。(復元船であった)

湖の様な所だったから、頤和園か北海公園だと思う。


あまりの寒さに口数が少なくなり、不意に女子の同学が昏倒した。
意識がなく、反応がない。

みんな半狂乱になろうにも、ろれつが回らないほどの寒さ。


病院へたどり着き、ベッドを囲んで輪になっても沈黙は続いていた。

彼女は棒のように横たわっており、呼吸もほとんどしていない。
いつもは白い両頬が、水気を含んで透明な氷の様だ。


交代で寝ずの番をすることになった。

(そういえば、この仲間たちと雪山で遭難した夢を見たことがあった
なぁ)

回らない頭で、前に見た夢のことをぼんやりと思い出していると、
誰かが砂糖入りの熱い葡萄酒を手渡してくれた。

飲んでしばらくすると、激しい動悸を感じて、どうやらパニックが
始まったらしい。
(誰かが袖を引いて座らせようとするのを振り払った)

付き添いの順番が回って来るまでの時間、泣くことも祈ることも
できず、病院の中をひたすら歩き回り、風の止んだ胡同を小走りに
廻った。

息を弾ませて病院に戻ってくると、同学の一人が怖い顔でものも
言わず、乱暴に手を引いて私を病室に連れ戻した。

(その怖い顔の心の中から、大きな声で「バカ!」と聞こえた)


夜が明けようとしている。

順番に付き添うはずだったのに、みんな揃っていた。

眠っていた彼女が身動きをして、目を開けた。

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怖くなったのは、それからだ。

そばに居た誰かにしがみついて、息が吸えなくなるほど泣いた。

同学の分厚い大きな手が、しっかりと私の背中を押さえている。
しっかりと押さえている硬い手が震えていた。

(私の大事な人を、返して!)

と、叫んだところで目が覚めた。


現実の世界は、夏の夜明け。鳥が鳴きはじめたところだ。
汗みずくで、息が震えていた。

(みんな元気で、みんないる)
(みんな元気で、みんないる)

何故なら、急な知らせは届いていないから。


同学のLが、在学中に入院した時、
「一番つらいのは、Lだ」と、
みんな辛いのを黙って、じっとこらえたじゃないか。

Lが退院して復学した時は、泣くほど嬉しかった。
あの時の喜びは、今も忘れない。

そして、誰かが辛い目に遭うことが、とても怖い。


気温が上がり始めた夜明けのベッドに座って、そんなことを思い出
した。


数時間後に、北京近郊がロックダウンした、という報道を見た。

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